【フランク・ロイド・ライトの軌跡 in Japan】
アメリカが生んだ20世紀を代表する三大建築家フランク・ロイド・ライトの日本での軌跡をご紹介させていただきます。ライトが手掛けた400件を超える作品の中で、日本での作品は4件。そのうち、2023年に竣工から100周年を迎える「旧帝国ホテル」をフォーカスしてご紹介したいと思います。
ライトの手がけた2代目帝国ホテルの旧本館(通称「ライト館」)は今から90年前の1923年(大正12年)に4年間もの工期を経て完成したのだそうです。
帝国ホテルの支配人だった林愛作氏の前職はニューヨークの古美術商だったそうで、熱心な東洋美術の収集家だったライトと出会い、その縁で本館の設計をライトに依頼することになったのだそうです。
(完璧主義だったライトは相当の予算オーバー、工期遅延、設計変更の嵐で経営陣と対立した結果林愛作とともに建築途中に解任されアメリカに帰国、その後は一番弟子の遠藤新が引き継ぎました。)
当時新帝国ホテルとしての披露宴が開かれる予定だった大正12年の9月1日は関東大震災に襲われたその日でした。周辺の多くの建物が倒壊や火災で甚大な被害に見舞われるなか、ライト館はほとんど無傷のままだったのは、ライトの設計により、耐震性や防火性への配慮がなされていたから。ライトが周りの反対を押し切って設けたファサードの池の水が震災当日、防火水槽となり最小限に火災延焼を食い止めたそうです。そして関東大震災を耐え抜いたことはその後のライトの名声を高めました。
★ライトが取り入れた日本の建築への敬愛—————–
旧帝国ホテルのモチーフは平等院鳳凰堂、左右対象となっている建物の外観は堂々とした印象を受けます。エントランス前に設けられた池も含め、建物全体の意匠性に優れており、西洋建築には珍しい高い軒が設けられています。日本文化の素晴らしさをホテル設計に活かすことを考えたライトは、日本人の暮らしと美意識について深く研究をしたのだそうです。
低い天井のエントランスを潜り小上がりの階段を上ると、3階まで吹き抜けの大空間が一気に迎え入れてくれます。この技法は人の気持ちを開放させ、安堵感を与える効果があると言われ、日本で古くからよく使われた建築技法です。何気なくそれを取り入れる辺りが、ライト自身に大きな影響を与えたという日本文化への敬愛と造形が感じられます。
また、ライトはスキップフロアーを好む建築家。単純に壁や階段でつなぐのではなく、小階段を随所に仕込み空間を流動的につないでいくのがまさにライトの建築ですね。
★空間と光とタイルが織り成す建築の美しさ——————
日本らしい栃木産の大谷石や愛知県産のテラコッタタイルを多用しています。そのため、西洋建築とも日本建築とも言えない佇まいがあります。空間の魔術師と言われたライトがこだわり続けた、空間の流動性と連続性が凝縮されていて、建物の外側と内側に同じ素材を用いることによって空間が連続して感じられ、流動的につないでいます。
また、テラコッタタイルと大谷石がメインに組み合わされて柱や壁に張られています。照明を兼ねる柱、光の籠柱からは照明の柔らかい光があふれ、隣り合う同じデザインの透彫煉瓦を通じて外部の自然光が差し込むスタイル。彫刻された大谷石に陰影を与え独特な雰囲気を醸し出しています。まるで建築そのものが光を与えているかと思わせるような仕掛けになって、多彩な幾何学模様の意匠がライトの世界観を見事に表現しています。
※現在は愛知県の犬山市「博物館明治村」様にエントランス部分だけ移築され復元保存されています。
★細部まで芸術家ライトの演出——————–
ライトは自身の設計した建築デザインに合わせて、室内備品や調度品のデザインも行ったそうで家具、絨毯、カーテンや食器まで多岐にわたり、建築家の範疇を超えて「芸術家ライト」として全てのデザインに情熱を注いだのだそうです。
余談ですが、1954年(昭和29年)、ジョー・ディマジオと新婚旅行で来日した、マリリン・モンロー「寝るときに身に着けるものは?」との質問に「シャネルの5番」と応えた有名なエピソードは「ライト館」での記者会見で生まれたのだそうです。
巨匠ライトの建築とインテリアとの調和を重視した旧帝国ホテルは、大正~昭和にかけて人々に親しまれ、社交の中心としてジャズ、ダンスや演劇のなどのエンターテインメント文化の発信地にもなりました。
1968年建て替え反対運動もむなしく、開業から40年あまりで老朽化と地盤沈下、客室の少なさを理由に取り壊されました。・・・もし現存していれば重要文化財級のホテルとなっていたでしょうね。
たった1件の作品からもライトの建築や意匠における思いに触れるとより一層作品が愛おしくなります。ライトの想いを現代風にアレンジされたラグコレクションは、質の高いニュージーランドウールやシルク、コットンなどの天然素材にこだわって生み出されたアート作品です。価格帯もハイクラスなものから、段階も様々。是非一度お手に取って生でご覧いただければ良さを分かって頂けると思います。
◆Frank Lloyd Wright Collection(ラグコレクション)
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